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復活のホンダインサイト ~現有資料から量産型を考察する~ [クルマ・バイク]

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かねてから来年のリリースと発表されていたHondaのハイブリッド専用車の姿がついに発表された。その名は「インサイト」。Hondaは初のハイブリッドにして数々の燃費記録を打ち立てたレコードブレイカーの復活である。

さてこのインサイト、来月開催されるパリモーターショーに向けてのコンセプトモデルであるが、少し前にアメリカ西部で目撃された艤装テスト車両の姿から想像するに、かなり量産型に近いことが窺われる。いかにもショーモデル的なところが随所に見られるが、基本的なデザインは市販される量産型にかなり近いと思われる。

それ故に、これを見た人により既にネットでは「プリウスのパクリ」という声も多く見られる。しかし、クルマという高レベルの工業製品に対して、たった2枚の写真をさらりと見ただけで「モノマネだ、あれと似ている」と判断された方は、工業製品というものをあまりご存じない方なのかも知れない。

新車が発売されるとその数日後に必ず発売される「~のすべて」という雑誌を一度でも熟読された方ならお分かりと思うが、クルマのデザインというものは何年も何年も熟考に熟考を重ねて成る物である。それはデザイン画、ミニチュア、実物大モックアップ、試作という気の遠くなるプロセスを経る。それはどんな工業製品も同じである。

クルマというものは鉄、ゴム、プラスチックなどなど、ありとあらゆる素材、部品の集合体である。それを一つの製品として組み上げるためには、生産ライン、資材調達、生産効率などなど、これまた気の遠くなるような項目をクリアする必要があるはずである。そうしないと値段が決まらない。自分も製造業に身をおく者としてそのことが痛切に判るだけに、工業製品の評価は軽々しくはできない。このことをご存じないモータージャーナリストが今余りに多すぎる。増して、Hondaという会社は誰よりもモノマネを嫌う会社と自他共に認められている。そこには必ず必然があるはずである。

さて、しかしながら情報が未だ余りにも少ない。その少ない資料で2代目インサイトの量産型を考察してみたい。

まず話題になっているフォルムである。

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おそらくマネ議論はBピラーから後ろにかけて繋がるラインを見て言われるものであろう。しかしながら、このNewインサイトの最大の特徴は、シビックのそれにも似たフロントボンネットからルーフに繋がるなだらかなラインにあると思う。この部分は、おそらく真横から見た時にはっきりと判るに相違ない。

自動車の空力には、セダンタイプは実は不利であることはよく知られている。ルーフ表面を通過した空気は、リアウィンドウのところで内側に巻き込んでしまい、乱気流となると同時に車を持ち上げようとする力に変わってしまう。そのような力を最大限弱めるには、ルーフからリアウィンドウをスムーズに繋げ、スムーズな空気の流れを維持したまま後ろに流せる、このインサイトのようなデザインが有利であることもよく知られているのである。故にこのデザインは空気とうまく付き合おうとすると必然であると言える。ライバルよりフロントからリアに至るラインがスムーズで洗練されている。人間の目線でこのクルマを見た時、かなり美しく見えるのではないだろうか。

しかしライバル車と比較すると、このスムーズな流れにかなりこだわったことが窺われる反面、逆にキャビンがかなり小さいのではないか、という懸念も抱く。フロントガラスがかなり小さく見えることもあり、座った時の開放感がどうか心配である。

細部を見てみよう。特徴的なところを列記すると、

①LEDヘッドライト:これはショーモデルの常套手段である。コストも重要な課題であるインサイトには現実的ではない。当然一般的なマルチリフレクター、またはプロジェクタータイプになるであろう。

②バンパー内のデイタイムライト:これも現実的ではない。この位置に一般的なフォグライトが来るのであろう。しかしオプションでデイタイムライトはこの位置に設定して欲しいものである。純粋にカッコ良い。

③フロントグリル:アクリル製のような感じであるが、ユーロシビックの例もあるため一概には否定できないが、これまでの例からみて一般的なスリット型になるであろう。

④メッキバンパー:既に雑誌に新型オデッセイの写真が載り、オデッセイもこのような意匠になることが判明している。今後HondaはこのようなFCXクラリティの意匠を受け継ぐ部分を統一アイデンティティとして打ち出していくものと思われる。正直個人的には嫌いではない。テカテカメッキよりも、渋いチタンカラーの方が好きであるが・・・

⑤ドアハンドル:これもコンセプトモデル的な小さいものである。一般的なハンドルになるであろう。

⑥ドアミラー:流線型でカッコいいが、鏡面が小さすぎないか? これもショー対応のものであろう。

⑦タイヤ:明らかに扁平率の高いスポーツ系タイヤである。転がり抵抗を減らしたい低燃費車には不向きである。隙間にアクリル板らしいものがはめ込んであるホイールもショーモデル的。実際には常識的なサイズが堅い。

⑧リア:下の写真を見ると、

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5ドアハッチバックの欠点である後方視界の悪さを解消する“エクストラウィンドウ”の存在が確認できる。モノマネ主張もこんなところからも出るのであろうが、このウィンドウの元祖はHondaのCR-Xである。そしてそれは初代インサイトに引き継がれた。寧ろ2代目プリウスが出た時、「Hondaのパクリだ」と言われたことは記憶に新しい。これもまた必然から出たものであろう。批判するほどのものではない。

また、シートの形状も量産を意識したものとなっている。そしてメーターバイザーを見ると、大きなバイザーの奥に平たいバイザー状のものが見える。シビック同様のマルチプレックスメーターであろうか? それともリリースにあったエコドライブ支援機能のパネルであろうか?

デザインにFCXクラリティのコンセプトを盛り込んだというNewインサイトであるが、比較してみるとなるほどとうなづける部分が多い。

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クラリティはやはりボンネットにエンジンが無いアドバンテージからか、キャビンがかなり前に前進しているが、インサイトはどちらかというとロングノーズっぽい。そこに違いがあるが、随所のデザインテイストに共通点があることがわかる。このワインレッドと同じ設定色がインサイトにもあったら、遠目には見分けがつかないかもしれない・・・・

さて、ここでインサイトと各車の実際の寸法を比較してみたい。寸法にはそのクルマのコンセプトがよく見えるものである。インサイトの寸法は今日のニュースで唯一取り上げていた某新聞から知ることができたものである。()内はインサイトとの比較である(全長、全幅、全高 ミリメートル)。

Newインサイト 4,375×1,695×1,425

プリウス 4,445(+70)×1,725(+30)×1,490(+65)

FCXクラリティ 4,845(+470)×1,845(+150)×1,470(+45)

シビックハイブリッド 4,535(+160)×1,750(+55)×1,435(+10)

 

似ていると言われるであろうプリウスと比較すると、インサイトの個性は明らかになる。コンパクトな全長である上に、車高も大幅に低いのである。ここにかつて空力を徹底的に煮詰めて“レコードブレーカー”と呼ばれた先代インサイトの流れを汲むクルマであることが判る。その意味で“インサイト”なのであろう。クルマというものは同じクルマでも車高が10mm違っただけでまったく違う印象を与える。プリウスと実際に並べてみると、その個性は明らかになると思われる。

FCXクラリティとはデザインコンセプトこそ同じものの車格は明らかに異なる。シビックハイブリッドとも大きく違う。車高は接近しているので、乗り降りの感覚はシビックに近いことが予想される。

さて、リリースに出た写真程度であれこれ考察してみたが、次に注目したいのはやはり売価である。「大幅なコストダウン」を謳っているだけに、200万台では人々は納得しない。出来れば180万、それが無理でも190万台である。大いに期待したいし、その出来によっては十分に次の愛車の候補として有力である。

Hondaはよく“PROTO TYPE”という名で発売の数ヶ月前に先行量産型を発表する。これが出てくるのが今から楽しみである。

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コメント 7

auto-akr

ホンダびいきなのはわかりますけど、正直
プリウスのパクリにしかみえない、というのは
見る人の素直な感想だと思いますよ。
私もそう思います。
(私も心情的にホンダを贔屓しますが)

これは、
先代ストリームをパクったトヨタのウィッシュに対しての
ホンダの意趣返しということでよろしいのではないでしょうか?
たまにはやり返しても良いと思います。


それに、ワンモーションシェイプのシルエットや
エクストラウインドウも、もともとプリウスではなく
ホンダのCR-Xが先だったのですから。


無理して「オリジナル!オリジナル!」と声高に
叫ばなくとも、実車が出て来ればプリウスVSインサイトで
購買層は選ぶことが出来ますから。
by auto-akr (2008-09-10 10:48) 

AURA

>auto-akr様
コメントを頂戴しありがとうございます<(_ _)>

仰るとおり、結局それを評価するのは、実際に現物を見、お金を出して買った人なのでしょうね。おそらくはホンダが最も大事にする走った時の楽しさの部分はきっちりと確保するでしょうから、そのところを世間が同評価するのかも楽しみです。

ちょっと居住性が悪そうに見えるのが難点ですが・・・
by AURA (2008-09-10 22:10) 

POWERD BY HONDA(古)

つい先日までのオイル高、環境問題、オイル販売価格と利用頻度・・・
やっぱりハイブリッドは不可欠でしょうか?
まだ1年のオデッセイを下取りに出して来年購入予定。
時代はハイオクじゃないですしネ。
フォルムは利にかなってますし、4thプレリュードの近代版っぽくて個人的には気に入ってます。
私はグリルのメッキに飽きたらきっと同色にペイントしてしまうと思います(その方がスポーティなので)
オデッセイの7km/Lハイオクからレギュラー使用で3倍以上の燃費ならちょっとうれしいな!街中を走ったら目を引く車でしょうね。発表と同時に購入かな???
by POWERD BY HONDA(古) (2008-11-13 13:37) 

ryufojp

私自身最近のトヨタ車こそHONDAのパクリだと思います。
特になだらかなルーフはHONDAのエアロデッキが元祖です。
2代目プリウスが出たときなど、これはHONDA車その物だと思いました。
トヨタがHONDAを真似れば絶対にヒットする事は間違いありません。
by ryufojp (2008-12-05 14:24) 

もりぞう@みちのくHenda

空気抵抗を考えると、セダン型ではこの形状が良いみたい。
そのおかげで後部座席はかなり狭い模様です。
先代の4doorインテグラの後部座席を想像すればいいかもしれませんね。

by もりぞう@みちのくHenda (2008-12-07 21:40) 

ハルタン@ホンダ命

似ているかどうかは関係ないのではないですか。多分、実車は、プリウスより低く、印象的には違ってくると思います。ただ、自分のイメージはゴキブリ!悪い意味じゃなく、空力を考えたフォルム、かっこいいです。プリウスのずんぐりしたフォルムよりは全然かっこいいです。しかし、考え方の違いではありますが、燃費はプリウスの方が上のようです。でも、走りはホンダらしいものらしいでね。即、仮予約しました。そろそろエコ替え!(これってlプリウスのCMですけどね!)
by ハルタン@ホンダ命 (2008-12-15 21:36) 

ホンダよ目覚めよ!

ホンダは何かにつけ他社のパクリばかりで
車を売ってナンボかもしれないが、、少しくらいプライドはないのか?
と言いたくなる。。

ビッツがバカ売れ・・・フィットの登場
プリウスのバカ売れ・・・インサイトの登場
ステップワゴンのモデルチェンジ・・・これはノアの尻にそっくり。。

マツダ、日産、スバルなど、それぞれに個性ある車を出しているが・・・
ちょっとホンダはパクリが露骨のようで・・・

きっと目指せ2位なんだろうね。。。
1位のパクリで甘い汁を頂戴みたいな感じで最悪。。。


by ホンダよ目覚めよ! (2009-10-12 18:21) 

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